初恋マニュアル


――たしか、陸上部だったよ?



愛里の言葉が頭によみがえる。


三浦くんも走ってるんだろうかと、そっと窓からのぞいてみた。


たくさんいる部員の中に、あとから入っていく人の姿が見えた。


先輩に小突かれてるその人が、三浦くんだとわかる。


もしかしたら、黒板を消してくれたせいで遅刻したのかもしれない。


申し訳ない気持ちになって、大丈夫かな?と彼の姿を目で追った。


けれど特にしかられることもなく、彼は和の中にすんなりと入っていく。


彼の持つ、雰囲気が周りをなごませてるように見えた。


さっき私が感じた優しい空気。


ホッと安心できるようなそんな空気をまとってる。


窓枠にもたれながら、いつの間にか彼が走る姿に見入っていた。


汗がキラキラと光ってきれいだな?と思う。


だれかの走る姿を見てきれいだと思ったのは、初めてかもしれない。


それがきれいなフォームだからなのか、三浦くんだからなのか……


よくわからないけど、現実の男の子にこんなに興味がわいたのも、三浦くんが初めてだった。
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