初恋マニュアル
それもこないだとはちがう、聞き方。



『羽生はいいヤツだよ?』



そう言った三浦くんは、あのときたしかに私と羽生くんがくっついたらいいみたいなニュアンスだった。


でも今はちがう。


まるで、こないだまで俺のこと好きだったくせに、もう他のヤツと付き合うの?って言われてるみたいだ。



「ごめん……」



急にあわてたように体を起こして、私の肩に手を置く三浦くん。



「また……泣かせちゃったね?」



そう言われてますます鼻の奥がツンとした。


視界が揺れてぼやけてるのは涙のせいだったんだとその時気付く。


ずっと見開いたままだったまぶたを閉じると、ポロポロポロっと2、3粒の涙がこぼれ落ちる。


廊下の床にポツポツとシミを作っていくのを、私はじっとながめてた。



「丸山が好きなら、それでいいんだ……変なこと言ってごめん」



今ならわかる。


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