初恋マニュアル
廊下にいきおいよく落ちていく涙は、さっきよりももっと大きなシミになっていた。


こんなぐちゃぐちゃな顔じゃ、上げられない。


三浦くんの上履きをボーッと眺めながら、詰まっていく鼻の息苦しさとヒッと悲鳴をあげるのどの奥が静まるのをただひたすらに待った。



「……ごめん」



もう一度、あやまる声が聞こえてながめていた上履きが一歩動く。


え?と思ったときにはもう、私の体は三浦くんにしっかりと抱きしめられていた。


背中と頭に回された手は、明らかにあの日とはちがっていて……


力が、熱が、私の全身に込められる。


心臓がうるさいくらいに鳴り響いていたけど、私じゃない音も同じくらい早くリズムを刻んでいた。
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