初恋マニュアル
だからきっと、クリスマスなんて一大イベントは、恋人同士でやるに決まってる。


愛里だって本当はわかってるくせに、わざと言ってるんだ。


一応、私をはげますため?


元気のない私を見兼ねて提案してくれてるのはわかってる。


だけどその原因を私は愛里には告げられずにいた。


薄々は感づいているのかもしれないけれど、あえて聞いてはこない。


腫れ物に触るみたいに、気を遣ってくれてるのがわかる。



「やっぱクリスマスといえば、チキンとシャンメリーだよね?あ!ケーキは何にする?チョコケーキかなぁ。それともやっぱり生クリームたっぷりの苺のケーキがいっか?」



愛里がずっと眺めてたのは、クリスマス特集の載った雑誌。


チラッと見ると、色とりどりのケーキが並んでるページが見える。


それが突然パタンと閉じられて、愛里は嬉しそうな顔でくるりと振り向いた。


愛里の雑誌を盗み見てた私は、慌てて自分の雑誌に目を向ける。



「ね?あのさ……」



「んー?」



何でもないふりをして返事をすると、さっきとはうって変わって真面目な声が聞こえた。
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