初恋マニュアル
あれからまた三浦くんは私を避けるようになっていた。


フラれた直後は、いつも通り話しかけてくれていたのに……


今はわざと私の側に近づかないようにしてるのがわかる。


挨拶さえしなくてもいいような距離。


無視してると思わせたくなくて、そうしてるのが私にはわかった。


だから余計に苦しくて、私も彼に近付かないようにするしかなくて……



「あんたたち、最近全然話さないし、近付かないようにしてるの知ってるんだよ?美羽はともかく、三浦くんにしては珍しいなって思ったから」



「……うん」



「それでも、私には言いたくない?」



悲しそうな瞳を揺らして、愛里が私を覗きこむ。


そこまでバレちゃってるなら、言うしかないか……


覚悟を決めて、私は愛里にあの日のことを全部話した。


黒板を消しにわざわざ来てくれたこと。


早苗さんの店に行ってくれてありがとうって言ってくれたこと。


羽生くんと付き合うのかって聞かれたこと。


それから……


抱き締められたこと。


黙って聞いていた愛里は、私が最後まで話し終えると、目を瞑って大きな大きな溜め息を吐いた。
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