初恋マニュアル
みんなが部活に行ったあと、いつものようにひとりで帰ろうと昇降口で靴をはきかえてたとき。


だれかの走ってくる足音がして、なにげなく顔をあげた。



「あ……」



三浦くんだった。


部活中なのかジャージ姿で、どこかに行く途中だったのかもしれない。


ーーなにか言わなきゃ


このまま無視とか最悪だもん。



「あの……バイバイ。部活頑張ってね?」



三浦くんも気まずそうに固まるから、私の方からがんばってそう言いながら手をふった。


よし、普通に言えたよね?感じ悪くなかったよね?


自分の中で満足しながら、三浦くんの言葉を待たずに通り過ぎようとしたとき。



「あ……その……大丈夫だった?」



「えっ?」



思ってもみなかったことを聞かれて、なんのことだろうと頭をかしげる。



「えと……なんのこと?」



仕方なくそう聞いてみると、三浦くんはさっきよりもさらに気まずそうに「あ……いや、その……」と言葉をにごした。


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