初恋マニュアル
私は三浦くんになにか心配させるようなことしたかなぁと、頭をフル回転させる。


で、思い当たったのが、休み時間の出来事だ。


でもあのとき、三浦くんは教室にいなかったわけだし、やっぱりちがうのかな?


だまったまま考え込んでいると、三浦くんが遠慮がちに口を開く。



「ごめん、いや、さっき羽生から休み時間のこと聞いて……」



ーーあ、やっぱりそのことか。ていうか、羽生くんてばよけいなことを……



「あ、うん!大丈夫大丈夫。私がちょっと大げさに反応しちゃって、あはっ……それに愛里とかみんなもそばにいたし、羽生くんも助けてくれたから」



私のトラウマを知る三浦くんだからこそ、たぶんすごく心配してくれたんだろう。


だから、私はなんでもなかったことみたいにそう言った。


あきらめるって決めたんだから、心配もさせちゃいけないって思ったから。



「ありがとね?心配してくれて」



明るい口調で三浦くんに笑顔を向けた。


三浦くんは、そっか……と少しホッとした顔をして、一歩私に近づいてくる。


それから、大きな手を私の頭に乗せて、ポンポンと軽くなでた。


あきらめるって決めたはずなのに、フタをしたはずの思いがあふれ出しそうになる。


ギュッと両手をこぶしににぎりしめて、ゆっくりとやんわりと私はその手から逃れた。



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