初恋マニュアル
校舎の中の静けさと、校庭の部活をする生徒たちの声や足音。


そのちょうど真ん中で私と三浦くんだけの時間が流れてる。


思っていたのとはちがう言葉に戸惑いながら、私は三浦くんが話すのをじっと待っていた。



「最近、丸山、学校楽しそうだよね?」



ニコッとやさしくほほえむ三浦くん。


それから少しだけ困った顔をしながら話を続けた。



「ちょっとさすがに気まずくて丸山から遠ざかってたのはたしかだけど、逆に気にはなっててさ。近くにいなくても直接話したりしなくても、同じ教室だから気配はわかるし、須藤と話したり笑ったり、前よりなんか楽しそうだなって思ってたんだ」



そんな風に、思ってくれてたんだ。


私をさけてた間もずっと、三浦くんは私を心配してくれてて、楽しそうに学校生活を送ってることをよろこんでくれてたんだって、少しだけうれしくなる。



「テニス部の女子とかともよく話してるし、たぶん丸山の雰囲気が変わったから、男子も今日みたいなことしたのかもしれないね?」



「変わった……のかな?」



自分ではよくわらない。


以前より少しだけ強くなった気はするけど、それでもまだまだトラウマから抜け出せてるわけじゃないから。



「うん、いたずらしてもいいかな?って思わせるくらいには」



やっていいとは思わないけどね?とクスッと笑う。

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