初恋マニュアル
ね?ってなんでもないことみたいにそう言った三浦くんに、私はやっぱり言葉が出てこなくて……


どう返事をしていいのかわからない私と、そんな私を気づかって部活に行くタイミングを失っていた三浦くん。


その空気をやぶるようにだれかの気配がして、ひょっこり顔を出したのは羽生くんだった。



「あ!いたいた!孝弘!こんなとこにいたのかよ~、部長が呼んでるぞ……ってあれ?丸山?」



私と三浦くんを交互に見比べながらそう言った羽生くんに、助かったとばかりに答える三浦くん。



「あぁ悪い、今行くよ。それじゃあ、丸山、またね?」



バイバイと手をふって三浦くんは校庭へと走り去って行った。


その背中を見送りながら、いつの間にか私の隣に立っていた羽生くんをちらりと見上げると、向こうも私を見てたみたいで自然と目が合う。


休み時間のお礼を言わなきゃって口を開こうとしたとき、先に羽生くんが話し始めた。



「いいの?誤解させたまんまで」



「えっ?」



なんのことを言われてるのかわからなくてそう聞き返すと、羽生くんは少し体をかたむけて私に目線を合わせてくる。



「さっきの、ちょっと聞いちゃったんだよねぇ。孝弘、俺と丸山のこと誤解してない?」


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