初恋マニュアル



「ごめん!またせちゃった?」



その声にショーウィンドウから目をはなす。


ふりかえったその先には、羽生くんが息を切らせて立っていた。



「あ……ううん、全然。さっき来たばっかりだよ?」



胸の前で手をふりながらそう言ったのに、なぜか羽生くんはかたまって、私の顔をじーっとみてる。



「えと……羽生くん?」



首をかしげてそう声をかけると、ハッとしたようにあわてて目をそらした。



「ごめん、ちょっといつもと雰囲気ちがうから、あせった」



えっ、やっぱりなんかおかしかったかな?と、急いで自分の姿を足元から確認しながら、最後に不安な気持ちで羽生くんを見る。



「やっぱり変……かな?」



「や!そうじゃなくて!全然変じゃないよ!むしろ可愛くてあせっ……たというか……あーごめん。おれなに言ってんだろう」



羽生くんは耳まで真っ赤にしながら、手で口をおさえて空を見上げた。



ーーここはお礼を言うべき?可愛いって言ってくれたわけだし。



そう思って照れてる羽生くんに、おもいきって声をかけてみた。



「あの……ありがと」



小首をかしげてニコッと笑いかけると、羽生くんはまじまじと私の顔を見て、最後にはぁーっと大きく息を吐き出した。
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