初恋マニュアル
「つーか、男連れとか、やるねぇ」
「なに?孝弘ふられちゃった感じ?」
三浦くんの名前が出たことで、羽生くんがピクッと反応した。
これ以上、余計なことをしゃべらせないように、食べ終わったトレーを持って羽生くんの背中を軽く押す。
「なんだよ、シカトかよ」
「先輩ふっといてもう同級生の彼氏とか、さすがにきまずいってか?」
「やっぱあれだろ?受験だからかまってもらえなくてつい近くにいるやつにってやつ」
「うわぁ、まじかよ、孝弘悲惨じゃね?」
ギャハハハと、なにがおかしいんだか下品な笑い声で私をからかう2人と、険しい顔でそれを見てる羽生くん。
エスカレートしそうな2人に、羽生くんがかばうように私の前に出ようとした。
ーーだめだ!このままじゃケンカになっちゃう!
だから怖いのをがまんして、いそいで口をはさむ。
「あの!私たちいそいでるので、これで失礼します!さよなら!」
できる限り大きな声でそう言うと、トレーを片手に持ち直してもう片方の手で羽生くんのうでをつかんだ。
まだなにかしゃべってる声がうしろで聞こえたけど、一切ふりかえらずゴミ箱にトレーを乗せる。
そのままずんずん出口に向かい、ショッピングセンターを出てすぐのクリスマスツリーまで来るとようやく足を止めた。