初恋マニュアル



「つーか、男連れとか、やるねぇ」



「なに?孝弘ふられちゃった感じ?」



三浦くんの名前が出たことで、羽生くんがピクッと反応した。


これ以上、余計なことをしゃべらせないように、食べ終わったトレーを持って羽生くんの背中を軽く押す。



「なんだよ、シカトかよ」



「先輩ふっといてもう同級生の彼氏とか、さすがにきまずいってか?」



「やっぱあれだろ?受験だからかまってもらえなくてつい近くにいるやつにってやつ」



「うわぁ、まじかよ、孝弘悲惨じゃね?」



ギャハハハと、なにがおかしいんだか下品な笑い声で私をからかう2人と、険しい顔でそれを見てる羽生くん。


エスカレートしそうな2人に、羽生くんがかばうように私の前に出ようとした。



ーーだめだ!このままじゃケンカになっちゃう!



だから怖いのをがまんして、いそいで口をはさむ。



「あの!私たちいそいでるので、これで失礼します!さよなら!」



できる限り大きな声でそう言うと、トレーを片手に持ち直してもう片方の手で羽生くんのうでをつかんだ。


まだなにかしゃべってる声がうしろで聞こえたけど、一切ふりかえらずゴミ箱にトレーを乗せる。


そのままずんずん出口に向かい、ショッピングセンターを出てすぐのクリスマスツリーまで来るとようやく足を止めた。
< 356 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop