初恋マニュアル
ピョンピョンはねながら必死にアピールするけど、ほかの人の声にかき消されてしまう。


見ると、黒板に書いてある借り物競争のところには、参加人数五人のうち、もうすでに三人が埋まっていた。


早いもの勝ちだって先生が言ってたから、残るはあと二つ。


これを逃せば、100m走と、あとは人に迷惑をかけてしまいそうな競技ばかりだ。


いくら人見知りのはずかしがりやだからって、ここはゆずれない。


手を大きく振りながら、一生けんめい声を出す。


その間にもまた一人、借り物競争に名前が書かれた。



――どうしよう!これ以外で出れそうな競技なんかないのに!



小さな体をグイグイ人の間にわりこませて、私は必死にアピールをする。


委員の子と目が合いさえすれば……そう思ったときだった。



「丸山、借り物競争だって」



頭の上からよく知る声が聞こえてきておどろいた。


見なくてもわかる。


三浦くんだ。


私の声はだれにもとどかなかったのに、三浦くんの高めの声はみんなに一発で通った。


ざわざわしていた教室内が一瞬静まり返る。


それから一斉に三浦くんの方に視線が集まった。
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