初恋マニュアル



「でも、きっぱりフラれたから」



それでも友達でいられたらいいなって思ったんだぁ、と続けると、羽生くんは納得いかないような顔でこちらを向いた。



「でもさ、さっきの話のせいなんだよね?ほんとは孝弘も丸山のこと……」



そうなのかもしれないって自分自身も感じてはいたけど、それでもどうしようもないことってある。



「でも、最近ずっと無視されちゃってて、だから好きとかそういうのなかったことにして友達としてやり直せないかなって思って……だからこないだ羽生くんにもそう言っちゃったのかもしれないね」



少し奥まってるとはいえ、風が冷たくなってきたのを感じて、手にはぁ~と息をふきかけた。


それに気づいた羽生くんが、ちょっと待ってて?と立ち上がる。


目の前の自動販売機に向かうと、戻ってきた羽生くんの手にはココアの缶が二つ。



「はい、ごめんね?こんなとこで引き止めちゃって」



「ありがとう、ううん、私の方こそ」



手渡された缶のあたたかさにホッとしながら、手のひらでそれをころころと転がす。
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