初恋マニュアル
「丸山はさ、あきらめんの?孝弘のこと」
羽生くんはまた私の隣に腰を下ろしながら、サラッと核心に触れてくる。
「あきらめる……っていうのとはちょっとちがうかな?言葉ではうまく説明できないけど……」
今の正直な気持ちを話すと、羽生くんは複雑そうな顔で私を見た。
「待つってこと?孝弘の気持ちが変わるのを」
「どうなんだろうね?自分でもよくわかんないや」
ふふっと笑いながらそう言って、コロコロ転がしていた缶のプルタブをカコンと開ける。
ごまかすように一口それを飲むと、ココアの甘さが口の中いっぱいに広がった。
「やっぱり……俺じゃダメ、だよね?」
下からのぞき込むようにそう言われて、ドキッとする。
目を合わせられなくて、視線を泳がせながら、それでもちゃんと答えなきゃってココアの缶をギュッとにぎりしめた。
「ごめん……羽生くんのことは好きだけど、三浦くんへの気持ちとはちがってて……こんな気持ちのまま羽生くんと付き合う……とか、そういうの考えられなくて……ほんとにごめんなさい」