初恋マニュアル
羽生くんはだまってわたしの言葉を聞いていたけど、そのうち「そっかぁー!」と、大きな声で言いながら、体をのけぞらせてベンチのうしろに両手をついた。



「わかった、うん、俺も男らしくあきらめることにする」



にっと笑いながら、こっちを見た羽生くんの顔はなんだかすごくすっきりしていて、少しだけ複雑な気持ちになる。


いらないって言ったオモチャを、だれかが欲しいって言ったら惜しくなるような、そんな気持ちに似ている気がした。



「あきらめついでにさ、教えてあげる」



「えっ?」



「こないださ、孝弘、俺に休み時間のこと聞いたって言ってたでしょ?」



そう言われて思い出した。


そうだ、あのとき、羽生くんたらよけいなこと言ってって思ったんだっけ。



「あれ、俺言ってないから」



「えっ?そうなの?でも、三浦くん……」



「あんとき、あいつ、 廊下にいたんだよ。それで、あとから丸山のスカートめくったやつらおこられてた」



そのときのことを思い出してるのか、羽生くんはククッと笑う。



「ほんとは言わないでおこうと思ったんだけどね?最後に俺からのプレゼント」



これのお礼も含めてね?と妹さんへのプレゼントを私の前に出してみせる。



「羽生くん……」


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