初恋マニュアル
「簡単にあきらめちゃダメだよ、お互い好きなんだからさ。どんな事情があるにせよ、孝弘が丸山のこと好きなのは俺が見たってわかるもん。だから、がんばれ」
どうしてこの人は、いつもいつも私の背中を押してくれるんだろう。
つらいときにはいつも笑顔でとなりにいてくれる。
この人を好きになれたら良かったのに……
「ちょっ!丸山?泣くなって!泣くとこじゃなくね?俺、ちょっといいこと言ったのに!」
あわてる羽生くんの姿を見て、涙は止まらないのに笑みがこぼれた。
泣き笑いみたいになりながら、ありがとって伝える。
私が泣き止むのを待ってから、羽生くんはゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか?今日はほんとありがと。すげー楽しかった」
まだ残ってるココアを急いで飲み干すと、私もあわてて立ち上がる。
「私も、楽しかった。いろいろありがとね?羽生くん」
「じゃあ、明日また学校で」
「うん、また明日」
バイバイと手をふって羽生くんは私とはちがうホームへと消えていった。
あきらめるなって言ってくれた羽生くん。
がんばれって背中を押してくれた羽生くん。
今までずっとみんなを傷つけちゃうから、あきらめようっておもってたけど、羽生くんにそう言われて気づいた。
傷つきたくなかったのは自分だったんだって。
少しでも可能性があるなら、つらくてもあきらめずに好きでいたっていいのかもしれない。
愛里に今日のことを早く話したくて、私も足早にホームへと向かった。