初恋マニュアル



「ふふん、美羽の好みも似合いそうなものも、私が一番よく知ってますから」



愛里はうれしそうに店の中に入ると、私に似合いそうな服をさがしはじめた。


その中から愛里が選んだのは、オフホワイトの生地に紺と白いお花がたくさん散りばめられたワンピース。


「クリスマスなんだし、絶対可愛いよ!着てみたら?美羽」



ちょっと丈がみじかい気もしたけど、たしかにすごく可愛い。


着てみると、サイズもピッタリだった。


それに合わせて薄いピンクのカーディガンまで着せられて、お母さんからもらってきたおこづかいは一気になくなりそうな予感がした。


自分は試着もしないで決めたくせに、私にはちゃんと試着をさせて、お店のお姉さんと一緒になって、似合う!とか可愛い!とかおだてまくる愛里。


私は自分の意見なんか何も言わせてもらえずに、ワンピースとカーディガンをお買い上げすることになってしまった。



ーー可愛かったから、いんだけどさ……



会計を済ませてふと時計を見ると、すでに一時を回ってる。


どおりでお腹もすくわけだと、なにか食べて帰ろうよ?と愛里に言ってみた。


すぐにそれに乗ってくると思ったのに、愛里はなかなか首をたてにふらない。


考え込むように時計とにらめっこしながら、指折り数えていた。
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