初恋マニュアル
「よし!ハンバーガーならいける!」
そう言ってまた私の手をつかむと、ずんずんフードコートに向かって歩いていく。
「ちょっ!ちょっと、愛里!私、パスタがいい!」
別にハンバーガーだってほんとはよかったんだけど、なんだかずっとこの調子で愛里のペースに乗せられてるのがちょっぴりくやしかったから。
私の言葉にピタッと足を止めた愛里は、すごいいきおいでふりかえる。
「だめ!時間ない!このあと帰って着替えて、それからクリスマスパーティーの準備しなきゃなんないでしょ?ハンバーガーだってギリギリなんだからね?」
ーーあぁ……せっかくの可愛い顔が台無しだよ……
そのくらいけわしい顔をして愛里はそう言った。
サラサラの長い黒髪を揺らして、愛里はまた前を向いて歩き出す。
結局、私の意見はなにひとつ聞いてもらえず、ハンバーガーのセットを大急ぎでほおばると、私たちはお店をあとにした。
家に着いたのは、ちょうど3時ぴったり。
買ったばかりの真新しい服に身を包んで、愛里に少しばかりのメイクをしてもらった。
桜色のグロスをつけ終えた愛里が、少しはなれて私を見る。
「うん、可愛い」
満足そうに笑って、それから今度は自分の完璧なまでのメイクに時間をかけた。