初恋マニュアル



「えっ?丸山さん?借り物競争なの?」



委員の女子もようやく理解したように三浦くんに念を押す。


まるでどこに丸山さんがいるんだ?とでも言ってるようだ。


三浦くんはそんな気持ちを知ってか知らずか、私の頭を上から指さす。


ここにいるんだってことを知らせてくれるように……。


委員の子は、ちょっと背伸びをすると、三浦くんの指さす方向に視線を向けて、ようやく私を見つけてくれた。



「あーほんとだぁ。丸山さん、ごめんね?気づかなくて」



そうあやまられて私は急いで首を横に振る。


私は彼女の名前さえおぼえていないっていうのに、彼女の方は私を知ってくれていたってことに、ひどく申し訳ない気持ちになる。


後ろめたくてなんとなく彼女から視線を外してうつむくと、もう一度確認するように声をかけられた。



「借り物競争で、いいんだよね?」



私はあわててうつむいていた顔を、もう一度彼女に向ける。



「あ、うん!よろしくお願いします!」



委員の彼女はわかった、とにっこり笑って黒板の方に向き直ると、借り物競争の下に丸山と記入してくれた。
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