初恋マニュアル
愛里や由宇ちゃんは、同じテニス部だから顔見知りなわけで、私だけがポツンと話に入れないでいると、夏帆ちゃんが私を指さした。



「先輩、あの子がいつも話してる美羽ちゃんです」



そう言われた阿部先輩が、こっちを向いてにこりと笑う。



「はじめまして、阿部です。この三人の話題にいつも出てきてたから、一度会ってみたかったんだ。よろしくね?美羽ちゃん」



やわらかなやさしい声は、彼の雰囲気にピッタリだ。


長身の夏帆ちゃんと並んでもおかしくないから、170センチくらいあるのかもしれない。


少し細身の体とサラサラな髪は、三浦くんに少し似てるような気がした。


ちがうのは細い眉とするどい目。


笑ってなかったらちょっとこわいかもしれない。


だけどボーイッシュな夏帆ちゃんとはすごくお似合いだ。



「こ、こちらこそよろしくお願いします!」



あわててそう言ってペコリと頭を下げる。



「うわさどおり、可愛いね?」



クスッと笑いながら、目を細める先輩に、私は動揺しておもわず夏帆ちゃんの顔を見た。


自分の彼氏がほかの女の子を可愛いなんて、いやじゃないのかな?って思ったから。
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