初恋マニュアル
だけど夏帆ちゃんは全然気にすることもなく、にこにこ笑ってる。


それどころかうれしそうにうなずいてる。



「ですよね!ほんと可愛くて、モテモテなんですよ?」



まだ付き合いたてって感じの敬語で、夏帆ちゃんはありえないことを口走った。



「ちょっ!夏帆ちゃん!そんなわけないじゃん!」



ーー彼氏だってまだ出来たことないっていうのに、そんなわけないじゃん!愛里じゃないんだから!



びっくりしてあわててそう否定すると、夏帆ちゃんはなに言ってんの?って顔で、さらにおどろくようなことを口にする。



「あれ?美羽ちゃん、知らないの?うちのクラスにもいるよ?羽生だけじゃないんだから」



ね?って愛里と由宇ちゃんに目配せしてる。


由宇ちゃんは小さくうなずいたけど、愛里は気まずそうに横を向いた。



「へぇ、そうなんだ?美羽ちゃんみたいなタイプって、守ってあげたくなる感じだもんね?」



先輩までがそんなことを言いだして、ほめられることになれてない私はどうしていいのかわからなかった。



「チーッス」



バタンとドアが開いて現れたのは、今度は知ってる顔。


五十嵐くんだ。


助かったとホッと胸をなでおろすと、続いて入ってきたのは羽生くんだった。
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