初恋マニュアル



「みんなそろった?そろそろお料理出していい?」



奥からいい匂いがしてきて、早苗さんが出てきた。



「あ、三浦くんがまだなんですけど」



愛里がそう言うと、早苗さんはわかってるっていうような顔でうなずく。



「私が買い物たのんだの。だから先にはじめちゃって?」



「えっ?そうなんですか?」



愛里が聞き返すと、早苗さんはいたずらっ子みたいな顔でニヤッと笑う。



「おじけづいて来ないとか言い出さないようにね?」



みんなにわからないように私にだけウインクすると、料理を運ぶために奥へと引っ込んで行った。


もし三浦くんが来てくれたとしても、そう簡単に自分の考えを変えるとは思えない。


それでもふたりとも、私のためにいろいろ考えてくれてる。


早苗さんにとっては、私だけじゃなくて三浦くんのためでもあるのかもしれないと思った。


店を貸し切りにしてまで協力してくれてるんだから、その思いははんぱじゃない。


テーブルに並んだ料理は、早苗さんお手製のものばかりで、しかもすごく可愛かった。


ミニトマトにチーズをはさんでバジルをのせた一口で食べられるカプレーゼとか、いくらやスモークサーモン、生ハムにチーズなんかを可愛く乗せたカナッペ。


アボカドのグラタンやほうれん草のポタージュ、それにメインはローストビーフが並んでる。
< 376 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop