初恋マニュアル
「女の子はいいけど、これだと男の子は物足りないだろうから、パエリアも作ってみたの。ちょっと待っててね?」
楽しそうに次々に料理を出してくる早苗さんを、愛里があわてておいかける。
「早苗さん!もう充分ですから!」
パエリアを持って現れた愛里のうしろで、早苗さんが満足そうな顔をしながら言った。
「じゃあ、食べ終わったら呼びに来てね?ブッシュドノエルとアップルパイも作ってあるから」
かんぺきだ。かんぺきすぎる。
三浦くんはいったいなにを買いに行かされたんだろう?ってくらいかんぺきだった。
「早苗さん、作りすぎですってば!」と愛里はおかしそうに笑う。
みんなで席につこうとしたとき、入口のドアが開いて三浦くんが息を切らして入ってきた。
「おそくなってごめん」
その手には、わりと大きな紙袋がひとつと小さなものがもうひとつ。
「あ、孝弘くん、ありがとね?その辺に置いといてもらえる?」
三浦くんが来たのに気づいた早苗さんが、いつの間にかまた奥から顔を出してた。
空いてるテーブルを指さして、買ってきたものを置くように指示してる。
そこに大きい方の紙袋を置いてから愛里のそばまで来ると、今度は小さな紙袋を差し出した。
愛里がらそれを受け取って、みんなのプレゼントが置いてあるテーブルにそれを加える。
「それじゃ、今度こそごゆっくり」
そう言って早苗さんは今度こそ奥へと引っ込んで行った。