初恋マニュアル



「ほら、美羽!ボーッとしてないで、片付け手伝って!」



そんな私にうしろからカツを入れるのは愛里だ。


ふりかえると羽生くんや三浦くんも食器やグラスを片付けてくれていて、それを早苗さんが手際よく洗ってくれている。


あわててみんなに加わると、まだ残っていた取り皿を集めて早苗さんのところまで持って行った。


それからイスやテーブルを移動しようとすると、いつの間にかとなりに羽生くんが立っていて……



「あ、丸山、重いだろ?俺、持つよ。貸して?」



「あ、ありがと……」



今日の羽生くんはなぜかやたらと私にかまう気がする。


なんとなく三浦くんのことを応援してくれてると思ってたから、ちょっぴり不思議に思って首をかしげた。



「羽生!私のも持ってぇ、重ーい!」



私が持とうとしていたテーブルを元の位置に戻しながら、羽生くんがあきれたように愛里に方に視線を移す。



「はぁ?須藤は軽く持てんだろ?テニスできたえてんだから」



「ちょっと!美羽とずいぶん扱いがちがうじゃん!」



ぷうっとわざとほっぺたをふくらませてすねたふりをする愛里は、今度は三浦くんに声をかけた。



「いいもんねーだ。三浦くんに手伝ってもらうから。ね?三浦くん」



三浦くんは少し笑いながら「いいよ」と、愛里の方へ歩み寄る。


その姿を目で追っていると、それをさえぎるかのように羽生くんが話しかけてきた。



「そーだ!こないだありがとね?一緒に買い物行ってくれて。すげーうれしかった」



「えっ?あ、うん」



「妹もすっげぇよろこんでてさぁ。ほんとありがと」



「ほんと?よかったぁ」



< 380 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop