初恋マニュアル
わざとなのかと思うくらい大きな声で話す羽生くんに、私は内心動揺してた。


羽生くんとふたりで買い物に行ったってこと、三浦くんには知られたくなかったのに……



「あらぁ、仲いいのね?美羽ちゃんと羽生くん」



早苗さんまでがそう言って、私はわけがわからなくなる。


三浦くんのこと応援してくれようとしてたんじゃないの?って思いでモヤモヤが晴れない。



「そうなんですよ、ふたりともすごく仲良くてうらやましいくらいです」



追い打ちをかけるように愛里がそう言った瞬間、私の中でなにかがプチンとはじけた。


もしかして三浦くんとじゃなくて、羽生くんと私をくっつけようとしてる?


この間、羽生くんが言ってくれたことはうそだったの?


ちがうってさけびたいのに、そうできない自分にも腹が立った。


ギュッと手をにぎりしめてその場で固まっていると、羽生くんが心配そうに私の顔をのぞきこんでくる。



「どうした?具合悪い?大丈夫?帰るなら俺、送ってくよ」



「……大丈夫」



それ以上しゃべったら泣いちゃいそうで、私は必死に首を横にふった。


いつもの羽生くんじゃない雰囲気に、少しだけこわくなる。



「大丈夫じゃないじゃん、送ってくから、ほら、行こ?」



そう言われてそっと背中を押されても足が床にくっついたように動かなかった。


なぜか愛里は助けてくれないし、早苗さんもなにも言ってくれない。


どうしよう……どうしたら……そう、思ったときだった。



「羽生、やめろよ……いやがってるだろ?」



その声におもわず顔を上げると、すぐそこには三浦くんが立ってて、私の背中を押す羽生くんのうでをつかんでいた。
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