初恋マニュアル
「孝弘には関係ないだろ?それに俺と丸山が付き合うの認めてくれてたんじゃないの?」
さも私たちが付き合ってるかのような羽生くんの言い方に、おどろいた。
--なに……言ってるの?
三浦くんはまだ羽生くんのうでをつかんだままだ。
だけど羽生くんの言葉に明らかに動揺してる。
「そう……だけど……でも丸山、いやがってるから」
「だとしても、孝弘には言われたくない」
コクンとツバをのみこんだ。
なんでこんな展開になってるのか全然わからない。
「丸山のこと、友達としか思ってないんだろ?俺はちがうよ?俺はちゃんと丸山に気持ち伝えたし、こないだもふたりで出かけたし……だから悪いけど、関わらないでくれる?」
行こ?って言いながら、羽生くんは三浦くんの手をもう片方の手でそっとはずした。
--待って?待って待って?ちがう!そうじゃない!
心の中でそうさけびながら、私は羽生くんの手から逃れた。
そのまま三浦くんの方に向き直る。
「ちがうから!私、羽生くんと付き合ってないから!」
必死だった。だってこんなのおかしい。
羽生くんは三浦くんをあきらめるなって言ってくれたのに、なんであんなこと言うのか全然わからなかった。
「……丸山?」
三浦くんがびっくりしたように私の名前を呼んだ。
本当はこんな風に言うつもりじゃなかったのに、止められない。
「だって……私が好きなのは……好きなのは……三浦くんだもん!」
三浦くんだもん……もう一度そう小さくつぶやいてくちびるをかみしめた。
羽生くんの強引な言い方とか、愛里や早苗さんがなにも言ってくれないこととか、自分の中で処理しきれないことが多すぎて頭の中がグチャグチャになる。