初恋マニュアル
でもみんな競技を決めるのに夢中で私たちのことになんか気づいてないようだった。


ホッとして席につこうとしたとき、机の上でほおづえをつきながらニヤニヤと私を見守る愛里の姿が目に入る。


わざとしらんぷりして席についた私を待ってましたとばかりに、愛里は隣の席から自分の椅子を引き寄せて体を近づけてきた。



「美羽、良かったじゃん。三浦くんに助けてもらえて。なんかさ、かっこよかったよね?」



愛里の中の三浦くんのポイントはどんどん上がってる。


いい人からかっこいいに変わってることを私は聞き逃さなかった。


それでもあんまりひやかされたくなくて、冷静なふりをして答えた。



「うん……そうだねぇ。それにしても……なんか、私……三浦くんに助けてもらってばっかりだなぁ」



「え?ほかにもなんか助けてもらったこと、あったの?」



何の気なしに言った言葉は、愛里に引っかかったらしい。


するどい突っ込みにしどろもどろになりながら、私はなんとかごまかした。



「やっ……えっと……ほら!消しゴム!ひろってもらったし!」


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