初恋マニュアル
「……羽生なんだ」
--えっ?今、なんて?羽生って言った?羽生って……羽生くんのことぉぉぉぉ!
「えええええっーーーー!!!!」
ものすごくびっくりして大声を出してしまうと、愛里があわてて私の口をふさぐ。
「なになに?どうしたの?」
「なんかあった?」
心配そうにうしろから羽生くんと三浦くんに声をかけられて、焦って必死に首を振った。
「なんでもない!なんでもない!もう美羽ったらぁ」
バシバシたたかれて、ごめんごめんとあやまりながら、私は今までのことを思い返してた。
いつからなのかはわからないけど、でもその間私はずっと羽生くんの話もしていたはずだ。
この間、買い物に付き合った時でさえ、愛里はイヤな顔ひとつしないで、行っておいでって……おしゃれしていきなって言ってくれていた。
「愛里……ごめん、私……」
いろんなすべてのことが無神経だったような気がしてそうあやまると、愛里は気にしないでって言うように笑顔を浮かべる。
「いいんだよ、美羽がそんなふうに思わなくても。だって、羽生が美羽のこと好きなのは知ってたわけだし、実際ね?もし三浦くんとうまくいかなかったら、羽生と付き合ったらいいって思ってたのはほんとだから」
へへって笑った愛里のその言葉にきっとうそはないんだろう。
でも知らなかったとはいえ愛里の気持ちに気づけなかった自分に腹が立った。
「そういうわけだから、もうダメだからね?もし三浦くんとうまくいかなかったとしても、羽生はもう美羽にはあげなーい」
いたずらっ子みたいにそう言って舌を出す愛里が、すごく愛しく思えて……
「愛里ぃぃ!」
そうさけびながら、おもいっきり愛里の体を抱きしめた。
身長差のせいで、愛里の胸に私が顔を埋めるようなかっこうになったけど、そんなのおかまいなしだ。