初恋マニュアル
なんとなくだけど、黒板の出来事は、愛里に知られたくなかった。


それがどうしてなのかはよくわからない。最近、私はよくわからないことだらけだ。



「あぁ、そっか、たしかにねぇ。でもなんだろう?さりげな~くやさしいとことか、ほかの男子にはないものをもってるよね?三浦くんは」



それ以上つっこまれなかったことにホッとしながら、愛里の言葉を頭の中でくりかえす。


たしかにほかの男子とはなにかがちがっていて、だから私もそれほどきんちょうしないで話せるのかもしれない。


中学生になったとはいえ、ほかの男子はみんな自分が一番で、例えば女子にやさしくするのも自分の評価をあげるためみたいな、そんな感じ。


でも、三浦くんは純粋にやさしいってことが、入学して三か月の間に、私と愛里の中で定着しつつあった。


私だけじゃなく、みんなに。


女子だけじゃなく、男子にも。


なんていうか面倒見がいいのかもしれない。


だれかがこまってれば、いつの間にか助けてたりして、でもそれが嫌味じゃない。


すごく目立っているわけでもないのに、だれもが三浦くんを知っていた。
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