初恋マニュアル
次のアナウンスが聞こえて、愛里がボーっとする私に声をかける。



「美羽、次の次が借り物競争らしいから、集合場所に待機だってさ」



「えっほんと?」



嫌すぎてぼんやりしてたから、全然聞こえてなかった。


あわてて立ち上がると、愛里ががんばってね?と笑顔で見送ってくれる。


私は力なくうなずくと、仕方なく集合場所へと急いだ。


速さというよりもいかに早くお題をクリアできるかの競技なだけに、並ぶ順番も男女いりまじってる。



「あ、丸山さん。がんばろうね?」



同じクラスでエントリーしている女子が話しかけてきてくれた。


私は相変わらず、この女子の名前を知らない。


顔は知ってるからホッとはしたけど、まだ不安はぬぐえなかった。



「……どんなお題が出るんだろうね?」



張りきってるその子になんとなく聞いてみると、そうだなぁと首をかたむける。



「めがねとか、タオルとか、そういうのだと楽そうだよね?持ってる人、探しやすいし」



そういわれて、やっぱり自分には向いてないって思った。
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