初恋マニュアル
コーナーを曲がりきったところで前のブルーのカラー四組の子を一人抜き、そのあとの直線で赤のカラー一組の子も一人抜いた。


ワッと歓声があがり、みんなが愛里の名前を連呼する。


あと一人抜けば一番手というところで、愛里のバトンが三浦くんに渡った。


その瞬間、水の中にいるみたいに遠くで歓声が聞こえて、三浦くんの姿だけが目にうつる。


スローモーションの中を三浦くんだけが普通の速度で走ってるみたいなそんな感じだ。


あっという間に先頭を走るグリーンのカラー六組を抜き去ると、あとはそのままゴールまで一直線に走りきる。


息がとまりそうなくらいの迫力に鳥肌が立った。


さっき、こんな人と一緒に自分は走ったんだと思うだけで、なんだかすごくぜいたくな気がした。


真剣に走る人たちの姿を目の前で肌で感じて、さっきまでくだらないことでどうしようとか思ってた自分がはずかしくなる。


純粋に体育祭を楽しんでるみんなの気持ちがちょっとだけわかったような気がして、そんな自分を少しだけ好きになれた気がした。
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