初恋マニュアル
「陸上部とか休みみたいだもんね?」
愛里の言いたいことが読めて、顔が熱くなるのを感じた。
「べっ……つに、陸上部だけじゃないもん。野球部だってサッカー部だって休みでしょう?テニス部だけだよ、雨の日に部活なんて」
わざとふてくされたようにそう言うと、愛里はハイハイって感じで軽くあしらってくる。
「ま、そういうことにしといてあげる」
私が反論しようとすると、愛里はさっさと席を立って、じゃ、部活行ってくるねぇ?と、笑いながら手をひらひらさせて教室を出て行った。
残された私はがっくりと肩を落とす。
――あ~あ、久々に愛里と帰れると思ったのになぁ……
仕方なく帰り支度をして、いつものように一人で教室を後にした。
朝、雨に濡れたチェックのプリーツスカートが、まだ湿っていて気持ちが悪い。
パタパタと風を通しながら階段を下りて、昇降口へと向かう。
上履きからローファーにはきかえて、雨の降る外へと一歩踏み出そうとしたときにハッとした。
――あれ?私、傘!忘れてる!
この学校には教室にそれぞれ傘立てがあって、私も今朝そこに入れたことを思い出した。