初恋マニュアル
そんなことをぼんやり思う。


この学校に入るだけでも必死だった私とは、ちがうのだ。


ため息をついて横を見ると、ちょうど愛里が呼ばれて席を立つところだった。


愛里も勉強がよく出来る。


それだけじゃなくて運動神経もいいし、器用だから家庭科だってバッチリだ。


おまけに可愛くてスタイルもいいんだから、男子から人気なのもうなずける。


以前ならそんな愛里が自慢だった。


なのに今は自分とどうしても比べてしまう。


そんな自分がいやなのに、どうしていいのかわからないでいた。


ようやく自分の名前が呼ばれてのろのろと席を立ち上がる。


どうせいい成績なわけがないとは思っていたけれど、二学期はがんばれよ?と先生に通知表を手渡しながら言われてあらためてへこんだ。


まだ見ぬ通知表は開く前から悪いってことがわかってしまったから。


重い足取りで自分の席にもどる途中、なぜか三浦くんと目が合ってしまった。


声の届く距離にきんちょうが走る。


三浦くんはいつもみたいにニッコリ笑って、どうだった?と聞いてくれた。
< 64 / 392 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop