初恋マニュアル
だめだ、私いま、すごくいやな顔してる。



「別に私と話さなくたって、他にたくさん話せる人いるんだから大丈夫だよ」



愛里が小さく息を吐いて、にらむように私の目をのぞきこむ。


自分でもわかってる。


素直じゃないってことくらい。


言っちゃいけないことを言ってるってことも。


でもどうしていいかわからないんだ。



「それ、本気で言ってる?なに、すねてんのよ、最近の美羽、可愛くないよ?」



「すねてなんか……」



「じゃあなに?」



なにも答えられなかった。


あの一件を愛里にだまってる時点で、うまく説明なんかできっこない。




「三浦くんのこと、気に入ってたんじゃないの?」



涙がでそうになる。


気に入ってるからこそだ。


なにかしゃべったら泣いてしまいそうで、私はだまってくちびるをかみしめた。



「美羽が初めて自分から話せるようになった人でしょ?なんで大事にしないのよ」



通知表はもうすべて配り終わっていた。


先生は夏休みの過ごし方と宿題について話し始めてる。
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