初恋マニュアル
みんな、適度にざわついてはいるけれど、ヒートアップした愛里の声が、三浦くんに聞こえてしまうんじゃないかと、気が気じゃなかった。



「私は、美羽が中学生になって、少しは変わってくれたんだって、うれしかったのに……ちゃんとリアルな男の子に恋してほしかったし、彼氏だって作ってほしかった。だからあえて突き放したんだよ?なのになにも変わらなかったら、意味ないじゃん!」



愛里の言葉の意味を理解するのに、少しだけ時間がかかった。



――今……なんて言った?あえて突き放したって……



やっぱり私の苦手な運動部にわざと入ったんだ。


そう思ったら胃がキュッとつかまれたような痛みにおそわれた。


愛里はなんで、そんなに私を男子と仲良くさせたいの?


たよってばっかりだった私をだれかに押し付けたかったから?


黒い思いが頭の中をうずまいて、私はどんどんネガティブになっていく。


男子が私に話しかけるのは、愛里と仲良くなるためなんだよ?


三浦くんだって愛里を気に入ってるに決まってる。


他の女子だって、私には話しかけないけど、愛里にはいつだって気軽に話しかけてた。


その上、愛里にまで見放されたら……私はこのクラスで一人ぼっちだ。
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