初恋マニュアル



――泣いちゃ、ダメ……泣いちゃダメだ……



愛里の言葉に傷ついて、泣きそうになるのをぐっとこらえた。


まだ今はホームルームの時間で、先生も何か話してる。


今泣いたら、注目されるのはわかりきっていた。


くちびるをキュッと引き結んで、私は一点を見つめた。


愛里の顔を見ないようにしながら、必死に涙をこらえる。



「美羽?聞いてるの?」



――やめて、やめて……今、口を開いたら、泣いちゃいそうなんだから……



仕方なくコクンと首をたてにふると、愛里はあきれたようにため息をついた。


そしてそれ以上、私に話しかけてくることはなかった。



――なんでこうなっちゃうの?



私は努力してたつもりだ。


でもそれでも愛里にくっついてる地味な女の子の印象はついてまわる。


私を、私として見てくれてる人なんてだれ一人いないんだ。


愛里の横顔をそっと見る。


怒ってるような、悔しいような、そんな顔。


私とはもう口をきいてくれないかもしれない。


そうなったら私は本当に一人になる。
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