初恋マニュアル
「美羽ー!あんた夏休みだっていうのに、毎日家にいて、どっか友達とでかけたりしないのー?」
お母さんが下からさけんでる。最悪だ。
二つ下の中学2年生の妹は、私とちがって活発で、夏休みも部活で忙しいらしく、ほとんど家にいない。
バレー部に所属しているだけあって運動も得意で、しっかりレギュラーにも入ってるみたいだった。
だから、運動の苦手な私を少しだけバカにしてるところがある。
どちらかというと、妹というより姉のような態度。
そんなしっかりした妹を見ているからか、お母さんは私が心配らしい。
ことあるごとに、高校生になったんだからと、愛里みたいなことを言ってくる。
そして言うのだ。
さっきみたいに一番、言われたくないようなことを……。
中学のころの夏休みは、いつも愛里と一緒だった。
お互いの家を行き来するのはもちろん、ときどきプールとか図書館とかお祭りや花火なんかにも連れ出してくれたりして、毎日がほんとに楽しかったっけ。
だから、こんなに一人ぼっちでどこにもでかけることのない夏休みは初めてだった。