初恋マニュアル



「はあぁ……」



今日、何度目かの大きなため息が出る。


まだ下から何かさけんでるお母さんをだまらせるには、でかけたほうがいいのかもしれない。


仕方なくのそのそとベッドから起き上がり、クローゼットからTシャツとデニムのミニスカートを取り出し身に付ける。


それから部屋の真ん中の白くて丸いテーブルの上に置いてある大きめの鏡を見ながら、ポニーテールに結い上げた。


窓から見える外の様子はエアコンのきいた部屋の中にいてもわかるくらいまぶしい光であふれていた。


きっと外は暑い。


湿気も含んでる。


炎天下の中、行くあてもないのに、わざわざでかけなくてはいけない状況にうんざりした。


小ぶりなバッグに財布とハンカチ、そして一応スマホも入れる。


それから階段を下に降りると、キッチンでなにか作っているらしいお母さんに、一応声をかけた。



「ちょっと出かけてくる」



余計なことを言われたくなくてそのまま返事を待たずに玄関へと急ぐ。


だけど空気を読まないお母さんはうしろから追いかけてきて、やっぱり余計なことを言うのだ。
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