初恋マニュアル
「あら!出かけるの?愛里ちゃんと?あんまり遅くならないようにね?」
私が出かけるのがよほどうれしいのか、テンション高めにそう言ったお母さんの言葉をさえぎるように、私は玄関のドアをおもいっきり閉めた。
――だから、やなんだ。
人の気も知らないで、愛里の名前を出してくる無神経さにうんざりした。
おまけに出かけろっていうわりには、遅くなるなって言ってみたり、矛盾してる。
玄関を出ると真夏の日差しが、出ている肌をジリジリと焦がしていく。
そこで初めて、私は日焼け止めを塗ってくるのを忘れたことに気づいた。
すぐに後悔したけれど、いまさらまた家にもどる気にもなれずに、仕方なくのろのろと歩き出す。
それだけでも、額から汗が流れた。
ハンカチを取り出してそれをぬぐう。
蝉の声がますます暑さを助長して、むせかえる暑さに息苦しさを感じた。
この道を真っ直ぐ行くと曲がった先に商店街がある。
そこにあるわりと大きな本屋さんで時間をつぶすつもりだった。
時間がまだ早いせいか、子供連れのお母さんが散歩している場面に何度もそうぐうする。
こんな時間に1人で歩いてる自分が、なんとなくみじめに思えてなるべく早足で商店街へと向かった。