浅葱色の鬼
抜け殻のように
縁側で庭を眺めて、寝ようとせず
食事を口にすることもなく
誰とも一言も話さなくなった



「安静にしろって、先生から言われただろ」



少しでも、紅音に触れようとすると

ギロリと睨まれる

一体どうしたというのか



「気分転換に、散歩に行かないか」



ジッと俺に刺さるほどの視線


紅音が、スッと立ち履物を履く


もう、俺のことを忘れてしまったのだろう
なぜここいるのかもわからず

もしかしたら、子を亡くしたことさえ
忘れてしまったのかもしれない



紅音は、涙をながすことなく



ただ縁側で、過ごしていた



命だったから、痛みや辛さから
自然と逃げる術を身につけたのか




だが、今は人




このままでは、寿命が縮んでしまう





少しでも長く

幸せだと笑って

生きていることを楽しいと感じて貰いたい




まだ間に合うはずだ






紅音の為に

紅音の願いを叶えよう





























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