浅葱色の鬼
茂を抱き、紅音が部屋に戻ると
泥酔した原田の横で
おまさも眠っていた

「おいおい 私がいなかったら
茂は、どうするんだ… まったく」


ふぅと、ため息を漏らし


「困った父上と母上だな」


茂を撫でる


「紅音!酷いじゃねえか!
他の女に俺を押し付けるなんて」


「土方… 赤子というのは可愛いものだな」


「おう 小せえのにいっちょ前に
デケえ声で泣きやがるし
紅音を独り占めしてるが、可愛いな」


「なんだその褒め方は…
素直に可愛いとだけ言え」


「可愛い」


「それでいい
あの……
貴重な経験をさせてくれて、ありがとう
原田もおまさも、大切な子を
私に託して寝てしまうんだ
それ程の信頼があるのは、土方の口添えが
あってこそだと思う」


「我が子は、もっと可愛いらしいぞ」


「命である私には、我が子を見るということは、死を意味している
でも… こんなに可愛い子なら
命を賭けて産みたくなるのもわかるな
だが…出産というのは、物凄く痛いそうだ
私は、痛いのが嫌いだから
耐えられないかもしれないな」


「何か 生きる方法は、ねぇのか?」


「さぁ 私は、早くに父を亡くして
結婚相手も病死したからな」


「ちょっと待て……
けっ… 結婚相手だと???」


「結婚する前に死んだんだ」


「覚悟は、してたが
衝撃がデカい…
そうだよな 恋なんて腐るほどしてるだろ
実際に聞くと、辛ぇな」


「2人だが…腐るのか?」


「ふ…2人
俺以外に2人……」


「俺以外……って……」


「俺、結婚より刀を選んだ
江戸を出る時の決意は半端じゃなかった
女遊びこそしていたが
結婚したいと思ったのは
紅音だけだ」


「そう、それは、実現できず、申し訳ない」


「だから!諦めねぇ!
何か方法がある!ぜってぇみつける!」


「命が何かも知らなかった奴が…
ふふっ おかしな奴だ
なぁ~ 茂~ 」














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