浅葱色の鬼
「紅音!このキズ覚えてねぇか?
紅音が治してくれたんだぞ!?」


藤堂が額を指さす


「私が治したなら、傷痕にはならぬ」


「治療した後だったからさ
それで、残ったんだろうって!」


「ふぅーん」





「紅音の握り飯が食べたい」


斎藤が言う


「もっとご馳走を食べろ」



「茂に会いにこいよ!大きくなったぞ!」


「茂?」


「俺の息子!紅音に懐いてるからな!」


「そうか」






幹部達の話を聞きながら

さほど関心なく、庭を眺める






「紅音…」

「なんだ」




返事をするのと同じくして
土方が紅音を膝に乗せ、抱きしめる



新選組に来てから、土方がくっついてくるのにも慣れ、大人しく座っている


「あんなに暴れてたのにな…」



蒼を抱いた永倉が、合流する



「私が?」


「ああ」


「そう」




永倉から視線を庭に戻し





しばらくすると







「クスクスッ」






笑い出した紅音に、全員が視線を送る





にこやかに庭を見詰める







「何か、思い出したのか?」



「ん?何も」






紅音の表情が穏やかになったことに



幹部達も嬉しくなり

顔を見合わせて笑った











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