浅葱色の鬼

紅音

近藤に許可を貰わず
女中達と買い物に出掛け
捕らわれた部屋の中で、記憶が蘇る


捕らわれたのは、私だけか…



どうして、私は命なのだろう



早く、人になりたい




ポツン  ポツン   ポツン



床に涙が落ちる



何度も助けて貰った


昔も今も




私は、歳さんが…土方が、好きだ



「紅音!!」

「紅音さん!すぐ縄を解きます!」


沖田が縄を解く間、土方が私の涙を拭う


「痛むのか?」


心配気な眼差しは、歳さんと重なる


「うっくっ……ふ……」


泣くのを我慢したいのに
どんどん泣きたくなる


「うわぁーーーーん」



土方に抱きつき、ついに大泣きしてしまう


「紅音?大丈夫!もう、大丈夫だから!」


急に泣かれて
訳も分からず
困っているだろう




でも、言葉にならないんだ



私の仲間を殺した、歳さんを


私を妻に迎えたいという土方を



どう区別したらいいのか





人になり、この世を去る私に
恋心を抱く資格があるのだろうか


















< 83 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop