浅葱色の鬼
きっと… この人は、私を知っている
知っていて余所余所しく
初めて会ったように接してくれている


「紅音さん!!もう!副長のそばにいて下さいよ!妻がいないって不機嫌な顔してますよ!」


厠へ行こうとする平隊士から
そう言われ、慌てて謝る


「あ、すみません!」

「土方さんと結婚したんだ!?」

「え?」

「ごめん、君のこと知っててね
土方さんと結婚したらいいなって
思ってたから、おめでとう!」


「ありがとうございます!」



やっぱり、知ってたのね
私とあんまり仲良くなかったのかな



宴に戻り、再びお酒を口にする



「 う゛」



急に吐き気に襲われ、お猪口を落とす


女の人達が別室で看病してくれた



「懐妊どすな~おめでとう」


「え?私… 赤子がいるの…?」




名前も思い出せない旦那様の  子





「へぇ!月のものがないんや!
御懐妊おめでとう!」






嬉しいはずなのに
どうして?




「私… 怖い…」



「初めてなんや
皆、怖いことや 大丈夫!」


「そうかな…」




旦那様は、喜んでくれた


その顔を見て、やっと嬉しくなった



子供みたいにはしゃぐ姿に
私は、旦那様が父親で良かったねって
お腹に手を当て、微笑んだ



きっと、旦那様となら
もっと幸せになれる

この子を大切に育ててくれる




「私、とっても幸せです!」


「俺もだ」




旦那様の笑顔は、いつも悲しそう

でも、今日の笑顔は、本物!



初めて、気を使われていないと感じた











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