英雄は愛のしらべをご所望である
「あら? 知らないの? 彼、今、王都では有名人さんよ?」
セシリアは唖然としたまま固まった。そんな彼女の姿を見て、リリーは堪えきれず、「変な顔になってるわよ」と笑い出す。
「え、や、だって……私、王都に半年もいるけど、全然そんな話聞いたことないし」
ウィルの名前を耳にしていたら、彼が来店する前に、セシリアが探し回っていたに違いないのだ。
知らないはずない、とセシリアは首を振る。けれど、次にリリーが口にした言葉に、セシリアは聞き覚えがあった。
「黒き英雄の再来」
「それって……」
それは、ここ一年程、よく耳にしていた言葉だった。
ライズ王国は、国土の半分程が海に面していて、山脈の連なる南西側は山を挟んだ反対側が二カ国と接している。
百ニ十年程前、ライズ王国は、領土を奪わんとする隣国の二カ国に攻め入られていた。
貿易が盛んで発展していたとはいえ、小国であるライズ王国は、国境を守る騎士団が壊滅する寸前まで押されていたという。
その時、国を救ったのが、当時はまだ平民出身の一騎士に過ぎなかったアサルドという青年だった。
彼は、前線で剣を振り、敵の大将クラスを次々と倒して、一気に戦況を覆した。長きに渡る戦は、アサルドの大活躍で終結し、ライズ王国の領土や国民は守られたのだ。
その後もアサルドは、騎士団の立て直しなどに尽力し、その活躍が評価され、国王から戦で手にした領地と爵位を賜わり、守りの要としてアサルド・セルラ伯爵を名乗ることになる。
国を守ったアサルドはその髪と瞳が黒かったことから『黒き英雄』として語り継がれ、また、平民出身で高い地位を手に入れた彼は、平民達の憧れとなった。
これが、『英雄の唄』で歌われる男の真実である。
セシリアは唖然としたまま固まった。そんな彼女の姿を見て、リリーは堪えきれず、「変な顔になってるわよ」と笑い出す。
「え、や、だって……私、王都に半年もいるけど、全然そんな話聞いたことないし」
ウィルの名前を耳にしていたら、彼が来店する前に、セシリアが探し回っていたに違いないのだ。
知らないはずない、とセシリアは首を振る。けれど、次にリリーが口にした言葉に、セシリアは聞き覚えがあった。
「黒き英雄の再来」
「それって……」
それは、ここ一年程、よく耳にしていた言葉だった。
ライズ王国は、国土の半分程が海に面していて、山脈の連なる南西側は山を挟んだ反対側が二カ国と接している。
百ニ十年程前、ライズ王国は、領土を奪わんとする隣国の二カ国に攻め入られていた。
貿易が盛んで発展していたとはいえ、小国であるライズ王国は、国境を守る騎士団が壊滅する寸前まで押されていたという。
その時、国を救ったのが、当時はまだ平民出身の一騎士に過ぎなかったアサルドという青年だった。
彼は、前線で剣を振り、敵の大将クラスを次々と倒して、一気に戦況を覆した。長きに渡る戦は、アサルドの大活躍で終結し、ライズ王国の領土や国民は守られたのだ。
その後もアサルドは、騎士団の立て直しなどに尽力し、その活躍が評価され、国王から戦で手にした領地と爵位を賜わり、守りの要としてアサルド・セルラ伯爵を名乗ることになる。
国を守ったアサルドはその髪と瞳が黒かったことから『黒き英雄』として語り継がれ、また、平民出身で高い地位を手に入れた彼は、平民達の憧れとなった。
これが、『英雄の唄』で歌われる男の真実である。