英雄は愛のしらべをご所望である
「僕の家は貧しくてね。唄は金を稼ぐ手段だったんだ。この美貌のおかげでかなり稼げたんだよ? 少しは親の手助けになれたとも思う。両親が他界してから色んなところを見てみたくて旅を始めたんだ」
初めて聞いたラルドの話に、セシリアは小さな衝撃を受けていた。
ラルドとセシリアが旅を始めたのは、一年程前。王都に来る前の半年間は共に旅をしてきた。
ラルドはどこでも人気だった。もちろんラルドの見た目は話題になるが、彼が皆を引きつける一番の要因は、演奏と唄である。
彼の唄はただ上手いだけじゃない。まるで演劇を見ているように人々の心を震わせるのだ。
ラルドは唄の登場人物を大切にしている、とセシリア思っていた。それほどまで純粋に唄を愛しているのだとも。
「歌う事は好きだ。ハープの演奏だってね。だけど、僕にとっては生きるための手段で、それは今も変わらない。今日の仕事だって、本音で言えば行きたくないけれど、生きるためにはやらなければいけない事だってあるから」
セシリアは思わず俯いた。櫛を持つ手が微かに震え、もう片方の手で抑え込む。
「ガッカリさせちゃって、ごめん。でもいつかは言わなきゃと思ってたんだ。セシリアが将来どうなりたいかはわからないけれど、演奏家になるにしろ、僕みたいになるにしろ、そういう人間がたくさんいるということ知ってほしい」
銀色に近いプラチナブランドの髪がセシリアの顔を覆い隠す。ラルドは顔の見えないセシリアを真っ直ぐ見つめていた。
初めてラルドがセシリアと対面した時、ラルドは『なんて真っ白な子だろう』と思った。まるで穢れの知らない子供のように真っ直ぐで、純粋で、音楽を心から愛し楽しんでいる女の子。
本当に旅に出してもいいのかと、かつてお世話になったセシリアの母に聞いた程だ。
世界は光と闇でできている。小さな村でしか生きたことのないセシリアには、厳しく辛い事が待っていて、耐えられないだろうとラルドは思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば、セシリアは良くも悪くも素直で前向きだった。
突然大きな辛いことにぶち当たるよりいいだろうと、ラルドの世話をしろと言えば、素直に受け入れ、コツコツと世話をする。世話をされ慣れていないラルドが困惑するくらい献身的にだ。
毎朝一人で自主練をし、内心ビクつきながらも初めての地に懸命に溶け込もうとする。エデンの仕事だって文句も言わずにやっていて、王都に住んで半年で友人も増えたようである。
ラルドが受けた最初の印象と現在のセシリアの印象はガラリと変わった。もちろん、真っ白さは変わらないが、根性があり、少し負けず嫌いの女の子になった。
初めて聞いたラルドの話に、セシリアは小さな衝撃を受けていた。
ラルドとセシリアが旅を始めたのは、一年程前。王都に来る前の半年間は共に旅をしてきた。
ラルドはどこでも人気だった。もちろんラルドの見た目は話題になるが、彼が皆を引きつける一番の要因は、演奏と唄である。
彼の唄はただ上手いだけじゃない。まるで演劇を見ているように人々の心を震わせるのだ。
ラルドは唄の登場人物を大切にしている、とセシリア思っていた。それほどまで純粋に唄を愛しているのだとも。
「歌う事は好きだ。ハープの演奏だってね。だけど、僕にとっては生きるための手段で、それは今も変わらない。今日の仕事だって、本音で言えば行きたくないけれど、生きるためにはやらなければいけない事だってあるから」
セシリアは思わず俯いた。櫛を持つ手が微かに震え、もう片方の手で抑え込む。
「ガッカリさせちゃって、ごめん。でもいつかは言わなきゃと思ってたんだ。セシリアが将来どうなりたいかはわからないけれど、演奏家になるにしろ、僕みたいになるにしろ、そういう人間がたくさんいるということ知ってほしい」
銀色に近いプラチナブランドの髪がセシリアの顔を覆い隠す。ラルドは顔の見えないセシリアを真っ直ぐ見つめていた。
初めてラルドがセシリアと対面した時、ラルドは『なんて真っ白な子だろう』と思った。まるで穢れの知らない子供のように真っ直ぐで、純粋で、音楽を心から愛し楽しんでいる女の子。
本当に旅に出してもいいのかと、かつてお世話になったセシリアの母に聞いた程だ。
世界は光と闇でできている。小さな村でしか生きたことのないセシリアには、厳しく辛い事が待っていて、耐えられないだろうとラルドは思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば、セシリアは良くも悪くも素直で前向きだった。
突然大きな辛いことにぶち当たるよりいいだろうと、ラルドの世話をしろと言えば、素直に受け入れ、コツコツと世話をする。世話をされ慣れていないラルドが困惑するくらい献身的にだ。
毎朝一人で自主練をし、内心ビクつきながらも初めての地に懸命に溶け込もうとする。エデンの仕事だって文句も言わずにやっていて、王都に住んで半年で友人も増えたようである。
ラルドが受けた最初の印象と現在のセシリアの印象はガラリと変わった。もちろん、真っ白さは変わらないが、根性があり、少し負けず嫌いの女の子になった。