クールな王太子の新妻への溺愛誓約

フィアーコに到着してから数時間しか経っていないというのに。


「もちろんでございます。マリアンヌ様が陛下と謁見している時に、ざっとではございますが、ここの侍女たちからこの王宮の説明をしていただきました」

「さすがはベティ。仕事が早いのね」


マリアンヌが感心すると、ベティは胸を張り誇らしそうに微笑んだ。ベティは誉め言葉に弱い。


「さぁ、こちらでございますよ」


ベティが右手を前に向けながら、マリアンヌを案内する。

部屋には、廊下へと続くもの以外に三つの扉があった。そのうちのひとつの前に立ち、ベティがドアを開ける。すると中には、色とりどりのドレスが所狭しと掛けられていた。左端の棚には、靴が入った箱や帽子などが整理されている。衣裳部屋のようだ。

マリアンヌが思わず「わぁ!」と黄色い声を上げる。
どれも新たにあつらえたようで、真新しさにキラキラと光ってさえ見える。マリアンヌが今着ているものも、この日のためにピエトーネで一、二を争う裁縫の技術者が作ったものだが、それにも勝るとも劣らないドレスが掛けられている。色から柄からどれをとっても素晴らしい。

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