クールな王太子の新妻への溺愛誓約

忘れたはずの笑顔を自然と取り戻しつつあったことも、マリアンヌを拒めなかったことも。
顔を合わせる度にマリアンヌを愛しく感じていたことも、ようやく理由がわかったようだった。


「……クレア」


レオンの声がマリアンヌの心に切なく響く。
胸が苦しいのは、マリアンヌにクレアの頃の記憶がないせいだろう。
自分が本当は何者なのか、自分自身で答えを見つけられないから。急に真っ暗闇の中に突き落とされたような感覚だった。右も左もわからない。これからどうしたらいいのかも。

ほんの少しでも当時の記憶が残っていれば、これほど不安にならずに済んだだろう。


「レオン様、私、わからないんです。どうしたらいいのでしょうか……」

「なにがそんなに心配なんだ。クレアは私のそばにいればいい。ただそれだけだ」


レオンに“クレア”と呼ばれるたびに、“違う”という思いが大きくなる。

レオンが笑顔を忘れてしまうほどに愛していたクレアが羨ましかった。それなのに、自分がそのクレアだと言われても、嬉しい気持ちより悩ましい気持ちの方が大きい。


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