クールな王太子の新妻への溺愛誓約
失意の中にいたレオンが心を閉ざしていても仕方がないこと。マリアンヌに少しずつ心を開き、笑顔も見せてくれるようになってくれたことはなににも代えがたい。
「マリアンヌが来てくれたおかげで、王宮の中もずいぶんと明るくなった」
「いえ、それは私の力ではなく、レオン様の笑顔のおかげです」
仕える者たちにも笑みが増えたように思う。それはやはりレオンが笑ってくれるからこそ。
「私が笑顔になれたのは、マリアンヌが諦めずに接してくれたおかげだ」
「私、諦めは悪い方なんです」
マリアンヌは腰に手を当てておどけて見せた。
そんな彼女をレオンが眩しそうに見つめる。
その目が熱っぽいものに変わったことにマリアンヌも気づき、突如、緊張感に包まれる。
不意にレオンの両手がマリアンヌの肩に置かれ、顔が近づいてきた。
ひときわ大きく弾む鼓動。マリアンヌはどうしたらいいのかわからず、力任せにぎゅっと目を閉じる。
次の瞬間、額にやわらかい感触を覚えた。
(……唇じゃ……なかった……)
マリアンヌの全身から力が抜ける。それでも胸は高鳴ったまま。耳の奥でドクドクドクと血流の音が聞こえるほどに心臓が暴れていた。
そんな彼女を見て、レオンが妖しさを秘めた眼差しで微笑む。
「次は額では済まないぞ」
マリアンヌの顔に、一気に火の手が上がる。
“額では済まない事態”を想像して赤面するマリアンヌを、レオンは愛おしそうに見つめた。