クールな王太子の新妻への溺愛誓約

バラとキス

ピエトーネで一泊し、マリアンヌたちはフィアーコへと帰ってきていた。

着いた自室で、マリアンヌはソファに深く腰を下ろし息を吐く。
連日の馬車での長時間移動は、体に堪える。それに加え、マリアンヌの人生を揺るがす事態が起こったのだ。疲れないはずもない。


「マリアンヌ様、久しぶりのピエトーネはいかがでございましたか？」


早速、紅茶を淹れてくれたベティは、マリアンヌの返答を興味深そうな眼差しで待った。何気ない質問をしながら、本音では国王夫妻から新情報は得られたのか聞きたいのだろう。

長く仕えてくれているベティに隠し立てするわけにはいかない。
マリアンヌが体勢を整え直し、ピエトーネで聞いてきた信じられないような話をベティにしようとした時だった。部屋のドアをノックする音が、マリアンヌの口を塞ぐ。

ベティが急ぎドアを開けると、そこに立っていたのはレオンだった。
マリアンヌの部屋にレオンが訪ねてくることなど、これまでに一度もなかったものだから、ベティは驚いて一瞬言葉を忘れてしまう。


「……レオン殿下、おかえりなさいませ。遠くまでお疲れさまでした」